2007年 06月 06日
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輝
隣にいた君は輝いていた。
『朝』
物語は朝に始まる。そう聞かされてきたし、そうだとも思う。
アラームの音。時間を見たら七時だった。
ふと、ベッドの横の木製のサイドテーブルに目をやる。
「サヨナラ」そう刻まれていた。
どんなもので彫ったんだろう・・・ナイフ?
少しゾッとしたが、とりあえず体の何処にも傷はないようだ。
とりあえずホッとした。
ただ、お気に入りのカステランのサイドテーブルに傷を付けられた事に
些かの怒りを感じた。
昨日、彼女と別れた。それは深夜の出来事。たわいのない事で・・・
最終電車が出たというので彼女を泊めた。別の部屋に。
こんな淡々と思い出してはいるが、数時間前は泣きじゃくる彼女をなだめるに
必死だった。
早々と着替えをする。ヘルムートラングのYシャツに袖を通す。首周りが少しきつい。
『太ったかな・・』誰が聞いているわけでもないが、口に出してみた。
スーツは・・・ベットの横に脱ぎ捨ててあるのを拾った。
昨日は、掛ける暇も無かったらしい。
“スーツには皺がある方がいい”親父の口癖だ。
最初は何を言っているのかわからなかったけど、だんだんと意味がわかる歳に
なってきた。
冷蔵庫から無糖の缶コーヒーを1本取った。とにかく、これが無いと始まらない。
すべての身支度を終えると、俺は缶コーヒーを手に持ちNYタイムズを小脇に挟んで
家を出る。いつものスタイル。
そして、ガレージを開けて、今日もフェラーリ348と顔を合わせる。
『ヒューッ・・格好いいね。』だらしなく口笛を吹き小声で言ってしまった。
こんなくだけた自分を部下の前では見せたくない。
でも、毎日ついつい言ってしまう。こいつの事を語ると止まらない。
それくらい愛している。
これでは彼女も妬くはずだ。
イグニッションを回すと轟音と振動が体を駆けめぐる。この瞬間が至福の時だ。
これから会社のある隣町まで、こいつとデートを楽しむ。休日を除いての俺の日課だ。
15分ほど走行していると路側帯に止まっているフィアットを発見した。
時間が無いので見過ごしても良かったのだが、同じイタリア車として
素通りは出来ない。
俺はフェラーリをフィアットの後ろに付けて、ゆっくり降りた。
白いワンピースを着た女性が、不安そうに近づく俺を見る。
ふと、フィアットの後ろを見ると三角停止板が控えめに置いてあった。
『育ちの良さそうなお嬢さんだ。』そう小声でいうと今度は
『どうしました?』と女性に聞こえるように声を大きくした。
するとその女性はこう言った。
『あはっ♥ら~ぶぅげっちゅぅ~♪』
これが鎌倉生子(かまくらいくこ)との初めての出逢いだった。
のちに“なまくらなまこ”に成長して大変な事をしでかすとは
この時は、まだ微塵も思わなかった。
物語はいつも朝始まる。それがどんな物語でも。
(で?ケルビンは何を??)
♪うにあの~ろめん・らいと・めきん・ろりきゃんおりすとぉ~ダウンタウン~
(呪いをかけているのね・・妻夫木似の店員に・・)
人気blogランキング←今日から見た人は、訳がわからないですね?でも、よろしくお願いしますっ!!
by kelbin
| 2007-06-06 23:22
| 企画